サワッディ カー
昨日、少しだけフィギュアスケート全日本選手権にふれましたが、浅田真央選手は最終的に2位でしたね。
優勝は安藤美姫選手。納得の結果です。
ファンとしては5連覇を逃したのは残念だけど、世界選手権にも出られるし良かったなと思っているところ。
まだ、ネット動画で見ただけで恐縮なんですが、久々にフィギュアスケートネタを書いてみようと思います。
なお、このブログの読者はフィギュアスケートについて詳しくない方も多いと思うので、できるだけわかりやすく書いていきますが、ややマニアックな内容かも。
しかも長いので、初めて「続きを読む」機能を使ってみました。
興味のある方は、読んでいただけると嬉しいです
■2010全日本選手権の感想
現在、海外なので、全日本はまだちゃんと見れていません。
今回、スポーツナビが放映よりも早くネット実況をしてくれたので、ほぼリアルタイムで結果を知ることができました。
その後、キーホールテレビでフジの放映を見ようとしたのですが、紙芝居ですらない映像で、音を拾うだけ。
(それにしても、毎度のことながらフジの塩原アナは気持ち悪かった。しかも国分さんとか高島アナとか、実況席の人数が多すぎる)
試合後は日本スケート連盟のプロトコル(採点表)をチェック。
深夜になってから、動画サイトで何人かの演技をみました。
だから、感想を言うのはちょっとおこがましいのですが、許してください。
それにしても、便利な時代ですよね。
今回の全日本選手権は、久々に清々しい対決だった気がします。
私は、浅田真央選手のファンですが、内容的にみて、今回の優勝は安藤美姫選手で全く文句はありません。
(以下、敬称略、浅田ではなく真央とするのはお姉さんの舞選手が一応いるから)
真央は現在、ソチオリンピックを見据えたジャンプの矯正中です。
他の選手の例を見ても、何シーズンか棒にふる覚悟でないと本当の矯正はできないようで、今現在もまだ完成形ではありません。
しかし、NHK以外の放映ではそのことをあまり伝えないので、一般的にはただ不調であるかのような印象だったような気がします。
そんな中で、1番大事な全日本でまとめてきたこと、来年3月の東京ワールドの切符を手に入れたことは、ファンとして嬉しい限りです。
こんな状況なのに、トリプルアクセルを回避しないという相変わらずのアスリート魂。
それを本意ではないのに許した佐藤信夫コーチもすごい。
さすが、殿堂入りしているコーチだけあるわ。
(日本人で殿堂入りしているのは、伊藤みどりと主に指導の実績を評価された佐藤コーチだけです)
試合後、「まだ自分は強くなっていく」という真央の言葉を心強く感じました。
一方、今シーズンの安藤のまとめっぷりはすごいですね。
フリーは毎回ほぼノーミス。これってそうそうあることじゃないです。
今よりも難易度の高い構成にすることも可能なので、安藤もまだ点数の伸びは期待できます。
演技とは直接関係ないけど、最近の安藤は顔の調子もいいと思う。
キレイだなあ って思うことがよくあります。
3位の村上佳菜子は今年シニアデビューで、最近マスコミの注目がすごいですが、才能という点では真央&安藤よりは落ちると思ってます。
っていうか、真央&安藤クラスの選手なんてそうそう出てきませんから。
マスコミは若い選手が好きだし、すぐに煽るから、選手も気の毒です。
ただ、村上のすごい点は、シニアデビューシーズンにしっかりと結果を出してきたことです。
度胸があるのかな。
個人的には、今回12位に終わった同じく実質シニアデビューだった今井遥の演技の方が、私は好きなんですが。
でも、日本みたいに国内の競争が熾烈な国では、ナショナル大会でしっかり結果を残さないと、あっという間にチャンスを逃してしまうんですよね。
だから、ここ数年の全日本選手権で女子上位陣の戦いは気合がすごく、見ごたえあります。
それでも枠には限りがあるわけで、昨年の中野ゆかり、今年の鈴木明子、もう1枠あればと思うばかりです。
■浅田真央のライバルはやはり安藤美姫
さて、今回改めて思ったのは、浅田真央選手の本当のライバルはキムヨナではなく、安藤美姫選手だってこと。
これは、たぶん昔からのフィギュアファンの多くは同じ意見なんじゃないかな。
4年前、真央のシニアデビュー時の世界戦権制覇を阻止したのも安藤です。
この時、多くの人が、ロシアのヤグディン&プルシェンコの関係を思い出し、今後は真央&美姫時代が来ると思ったんじゃないでしょうか。
ここで一応説明すると、ソルトレイクシティオリンピックでは、このヤグディン&プルシェンコの対決が1番のハイライトでした。
2人は同じロシアの選手で、しかもミーシンという超有名コーチの生徒でした。
その後、ヤグディンはミーシンの元を離れ(ミーシンがプルシェンコばかりを可愛がるという理由)、昨シーズンまで真央のコーチだったタラソワに師事します。
この時代の男子フィギュアは、史上最も高難度ジャンプが競われていて、4回転は2種類、4回転からの3連続ジャンプも入れないと優勝できないという雰囲気。
そうなった原因の1つが、ヤグディン&プルシェンコという2人の天才スケーターの存在です。
この時期、日本のエースだったのが、現在、解説や髙橋大輔のジャンプコーチをしている本田武史。
今にして思うと本田もすごかったのですが、2人に阻まれてなかなかタイトルも取れないし、肝心な時に失敗する期待外れなイメージで。
しかし、ジャンプという点に注視すると、歴代日本人の中では本田が最もすごいと思います。
だって、フリーで3回も4回転を成功させたこともあるんですよ。
もし、あとホンの少し時代がズレていたら、日本男子で初めてオリンピックメダルやワールドの金メダルを取るのは本田だったかもしれないです。
タイミングってありますよね。。。
さて、このヤグディン&プルシェンコ、ロシア国内で圧倒的に人気があったのは年の若いプルシェンコです。
ヤグディンは、ロシア国内選手権は1度も優勝することはできませんでした。
世界選手権は4回も優勝してるのに、ですよ。
そして、ソルトレイクを制したのはヤグディン。プルシェンコは銀メダル。
ソルトレイクの時、西側諸国のマスコミは総じてヤグディンを応援する立場だった記憶があります。
一方、ロシア国内では、ヤグディン&タラソワは国賊に近いような扱い。
(私は、どっちかというとプルシェンコ派です)
その後プルシェンコはトリノで金、バンクーバーで再び銀メダルをとりましたので、知っている方も多いと思います。
でも、ヤグディンが引退後のプルシェンコはちょっと別格の存在になってしまって、本当の意味でのライバルはいなくなった気がするんですよね。
その分、言動とかも含めフィギュアスケート界全体について憂えているような、変な使命を感じているような。
とまあ、長々と書きましたが、圧倒的な才能と技術を背景に、同じ国の、しかも兄弟弟子関係にある2人がライバルとして戦いを繰り広げ、フィギュア全体を牽引していったわけです。
真央&安藤、2人の関係もちょっと似ていると思うんですね。
同じ日本、それも同じ名古屋出身。子供のころは同じ門奈先生に習っていたという同門出身。
年の差もほぼ同じで、国内的に人気があるのは後から出てきた真央の方。
ただ、現役時代のヤグディン&プルシェンコと違って、真央&安藤自身は仲はいいみたいですね。
そして、女子としては圧倒的なジャンプ能力。
異論はあるかもしれませんが、歴代の女子の中で伊藤みどりに次いでジャンプ能力が高いのは、やっぱりこの2人ではないかと思うのです。
イメージとしては、安藤は5種類のジャンプもきちんと跳べるし、ジャンプだけを見ると安藤の方がややリード。
一方、真央は3Aという必殺技に加え、ジャンプ以外の要素もトータル的に素晴らしい選手になったという印象です。
その2人が、ほぼ同時期に同じ日本に生まれたことが、お互いにとって良かったのかどうか?
それは、2人が引退する時にならないとわかりませんね。
とにかく、4年前、これからは真央&安藤時代になるだろうと確信したのです。
■真央&安藤とループジャンプ
一般的に、2人のジャンプ能力が高いとされるのは、浅田真央がトリプルアクセル(3A:8.5点)を跳び、安藤が4回転サルコー(4S:10.5点)を跳んだことがあるからです。
未だ、女子で安藤以外に4回転を跳んだ選手はいません。
しかも、4回転の中でもサルコージャンプは、男子でも跳べる人は少なく、今現役の日本男子選手は誰も跳んでいないと思います。
(前述の本田は跳んでました)
安藤の4回転が認定されたのは旧採点時代で、新採点になってからはジャンプの回転不足が異常に厳しい(特に女子選手に対して)ので、今だと認定されたか微妙です。
それでも、すごいことには間違いありません。
しかし、2人のジャンプ能力が高いなと思うのはそれだけではなく、コンビネーションジャンプ(コンボ)のセカンドジャンプに、3回転ループ(3Lo:5.1点)を入れられることです。
ジャンプの種類は全部で6種類ありますが、そのうちコンボの2つ目に跳べるのは、トゥループ(T)とループ(Lo)だけ。
女子の場合、セカンドに3回転を入れられること自体、すごいアドバンテージになります。
最も難度の低い3T-3T(8.2点)を入れる女子選手は今シーズンは結構いて、例えば、村上が入れているのもこの3T-3Tになります。
今回の全日本で14歳、ジュニアながらに5位になった庄司理紗はそれよりは少し難しい3S-3T(8.3点)を入れています。
また今回は不調でしたが、今井遥は3Lo-3T(9.2点)を入れていて、この辺りから希少性が出てくる感じ。
でも、少し前まで真央&安藤が得意としてきたジャンプは、これらとはレベルが違います。
安藤はコンボとしては最高難度になる3Lz(ルッツ)-3Lo(11.3点)を、真央はその次に難度の高い3F(フリップ)-3Lo(10.4点)を入れてました。
ちなみに、キムヨナが得意としているのは、3F-3T(9.4点)になります。
昨シーズンは3Lz-3T(10点)も導入。これも、なかなかすごい。
なお、点数は現在の基準で計算してます。結構、変わるんですよね。
Loは点数も高いのですが、セカンドにLoを入れるすごさは点数では測れないと思うんですよ。
Tは、ファーストジャンプを着氷後、もう1つの足もつけて両足で跳びあがります。
一方、Loはファーストジャンプを着氷したその足で、そのまま片足で跳びます。
なんで、そんなことができるかわかんない。
試しに、半回転ー半回転ででもやってみてください。
パッと見の印象だと、セカンドを素早く跳びあがっているのがLo、割とゆっくりだとTです。
テレビなんかのコメントでは、その2つの違いもわからずに、キムヨナのジャンプの方が迫力があるとか言っている人もいるような気がします。
何故か、男子では3Loをセカンドに入れている選手は、ほとんどみた記憶がありません。
女子では、アメリカやロシアの選手などチョコチョコいますが、当時、実質的にこれを武器にしていたのは真央&安藤だけでした。
さて、ここで過去形で言っているのには訳があります。
約3年前から、このセカンドの3Loはほとんど認定されなくなってきたのです。
本来ダウングレード認定は、90度以上足りない場合にとられるはずなのですが、とにかくLoは異常に厳しい。
どんなLoなら認定するのか? ジャッジに跳んで手本を見せてといいたい。
一方、3Tの認定は比較的ゆるやかです。
私自身詳しいことはわからないのですが、セカンドのLoを360度完全に廻りきることは物理的に無理と 読んだこともあります。
伊藤みどりのセカンド3Loなら認定されるんじゃないかとも言われますが、よくわかりません。
この結果、実害を被ったのは、真央&安藤、そしてこれから入れようと思っていたであろうアメリカの若手選手(フラットやワーグナー)です。
以前も書きましたが、これは異常なキムヨナ上げと無関係ではないと私は思ってます。
キムヨナは単独ジャンプでもLoは苦手で、ほとんど入れていないのです。
結局、安藤はセカンドに3Loを入れることを半ば諦め、一方の真央は3Aを3回入れるという暴挙に出たわけです。
結果3A3回は成功するも、バンクーバーを制することはできませんでした。
今季からは、ダウングレードと認定の間に回転不足として70%評価という、いわゆる中間点が出来たので、少し前よりは3Loを入れるメリットも出てきました。
しかし、そういう納得のさせ方は本来はおかしいと思うんですね。
■国内2番手の不幸
安藤にとって、メダルを取るという点で不幸だったのは、同じ日本に真央がいたことです。
一般によく言われるのは、国内2、3番手は下げられるということです。
特に、このところの日本女子は極端に強いので、日本人ばかりが何年にも渡って表彰台を独占しかねません。
だから、特にそんな調整が入っているような気がします。
男子やアイスダンスは長年、オリンピックの金メダルをロシア(ソ連含む)が独占してきたし、それが実力なら仕方ないと思うのですが。
日本スケート連盟の政治力のなさなんでしょうかね。
ISU(国際スケート連盟)にとって、真央はある意味「金のなる木」です。
日本というおいしいマーケットも、そしてスポンサーも連れてくる。
しかも、どんな試合も、自ら「出たい」という優等生ぶり。
生かさぬよう殺さぬよう、本当に絶不調になったら困る。でも、毎回金メダルでも困る。
ジャッジも、その辺の匙加減に苦慮しているようにすら見えます。
一方、安藤は今回は良かったなと思っても、意外に点数が伸びないことも多かった気がします。
真央が初優勝した3年前のイエーテボリ世界選手権で4位だった中野ゆかりも同様で、点数の低さに現地ではブーイングがありました。
(その時の3位はキムヨナです)
一方、2年前、安藤が世界選手権で銅メダルを取ったのは、真央が4位の時でした。
結局、「真央&安藤時代」にはならず、ここ数年、キムヨナと真央のライバル対決ばかりが宣伝されました。
なお、以前にも書いたかもしれませんが、純粋な実力という点では、キムヨナは真央&安藤ほどではないと私は思ってます。
点数の高さを考慮せずにキムヨナを見ると、なかなかいい選手だし、少なくとも韓国においては奇跡のような選手だと思います。
個人的に、4年前の東京ワールド時代のキムヨナ(ロクサーヌ&あげひばりの頃)は、結構好きでした。
キムヨナ本人も現状を良しと思っているようなので意味がありませんが、もし、普通の採点で、マスコミが異常に煽らなければ日本でも人気が出たんじゃないかと思います。
来年3月の東京世界選手権では、果たしてどんな結果になるんでしょうね?
安藤は久々に国内1番手だし、真央は前年の女王。
自国開催は有利とも言われているので、久しぶりに両方が表彰台に乗ることもあるかもしれません。
私の最大の希望は、そういうのとは関係なく、まっとうなジャッジがされることなんですけど。
■四大陸選手権にはびっくり
全日本選手権後は、表彰式よりもどの大会に誰が派遣されるかということに注目が集まります。
オリンピックがない年は、ワールドに誰が派遣されるかが最大の関心事項。
しかし、私が密かに注目していたのは四大陸選手権の派遣です。
というのも、来年、台北大会なので見に行くつもりなんですよね。
日本選手やアメリカの選手は1軍選手でなくても、生で見たい選手はいっぱいいるから。
ところが、蓋を開けてびっくり。
男子は、髙橋、小塚、羽生、女子は、真央、安藤、鈴木明子という贅沢すぎる布陣。
いったい日本スケート連盟の選手育成戦略はどうなっているの? と心配になるほどです。
なお、四大陸選手権というのは、ヨーロッパ選手権に対抗して作られたヨーロッパ以外の国の選手が出れる大会です。
ヨーロッパ選手権は歴史も権威もある大会で、それに匹敵する大会にしたかったみたい。
しかし、当初の目論見とは違って、四大陸は、長い間、日本やアメリカ等の強豪国では、1.5〜2軍の選手が派遣されることが多かったんですよ。
その割には、ポイントが稼げて、世界ランキングの順位を維持することに役立つので、ワールドに出れない選手にとってはなかなかおいしい大会なのです。
逆に、ワールドに出れる選手にとっては出るメリットはそんなにない。
ところが、2,3年前から、ISUの要請もあって、特に日本ではワールドとほぼ同じエース級が派遣されるようになったんですね。
日本ほどではないにしろ、カナダやアメリカもそう。
結果、日本の2軍選手(といっても他国なら立派な実力)は、国際的なチャンスをかなり失ってしまった。
一方、それでも四大陸を断固拒否したのがキムヨナです。
2度の自国開催を、一度は軽い怪我を理由に、前回はチンクワンタISU会長が名指しで出ろといったのに無視。
強すぎる・・・
それにひきかえ、日本は言いなり。 そして、真央はいつも天然で「四大陸、出たいです」。
それでも、オリンピック後の今年は、もっと門戸を広げると思っていたんだけどなあ。
個人的には嬉しいなと思う反面、髙橋、安藤あたりは休んだ方がいいんじゃないの? って心配したり。
実際に見れるかどうかは、当日にならないとはっきりしないので、見れない時は、普通に台北観光を楽しむつもり。
もし、実際に見れた場合は、現地レポするつもりなので、(一部の方は)楽しみにしていて下さいね。
またまた長くなってしまいましたが、次回からは、また旅行ブログに戻ります。
それでは、また
〈2010バンクーバーオリンピックの記事はこちら〉
〈2010世界選手権の記事はこちら〉